環境分析 : 水質分析

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水質分析

生活環境の保全に関する環境基準の分析業務
河川 8 項目 湖沼 11 項目 海域 11 項目

分析業務 河川 湖沼 海域
1. 水素イオン濃度(pH ピーエッチ) 1 1 1
2. 生物化学的酸素要求量 2
3. 化学的酸素要求量 2 2
4. 浮遊物質量 3 3
5. 溶存酸素量 4 4 3
6. 大腸菌数 5 5 4
7. n-ヘキサン抽出物質(油分等) 5
8. 全窒素(または総窒素) 6 6
9. 全りん(または総リン) 7 7
10. 全亜鉛(Zinc) 6 8 8
11.ノニルフェノール 7 9 9
12. 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 8 10 10
13. 底層溶存酸素量 11 11
14. クロロフィルa
15. 電気伝導率

1. 水素イオン濃度(pH ピーエッチ)

河川 1 湖沼 1 海域 1

アルカリ性・酸性の度合いを判断する指標

水素イオン濃度(pH)は0~14の15段階で示し、7が中性、それよりも低い数値は酸性、反対に高い数値はアルカリ性です。水素イオンが増加すると数は低く酸性傾向に、水素イオンが減少すると数値は高くアルカリ性傾向になります。
水に二酸化炭素が溶けると結果的に水素イオンが増加し、pHが低く(酸性傾向)なります。水草や植物プランクトンが光合成によって二酸化炭素を消費すると結果的に水素イオンが減少し、pHが高く(アルカリ性傾向)なります。また、コンクリート打設や薬液注入などの工事の要因によってpHが高くなることもあります。
河川・湖沼などの水生生物に安全なpHは6.8~8.5、水道水のpHは5.8~8.6です。

2. 生物化学的酸素要求量 : BOD Biochemical oxygen demand

河川 2

河川における有機物による水質汚濁の指標

河川で微生物が有機物を分解するときに必要とされる酸素量(生物化学的酸素要求量)は、採水した水の溶存酸素量と20℃で5日間培養した水の溶存酸素量から求められます。
有機物が多ければ消費する酸素量も多くなるので数値が高いほど水が汚れていることを意味します。

大量の有機物がある河川では微生物が有機物を分解するときに溶存酸素が減少するため、水中生物は呼吸が出来なくなるなどの影響を受けます。

3. 化学的酸素要求量 : COD Chemical oxygen demand

湖沼 2 海域 2

湖沼・海域における有機物による水質汚濁の指標

化学的酸素要求量は湖沼や海域において微生物が有機物を分解するときに必要とされる酸素量であり、湖沼や海域の水では過マンガン酸カリウムの酸化剤の消費量から酸素量を求めます。
数値が高いほど水が汚れていることを示します。

河川の水の分析基準のBODで湖沼や海域の水を分析すると植物プランクトンの増殖により光合成が行われ、それによって溶存酸素が供給されるため正確な分析が困難になります。そのため、湖沼や海域では過マンガン酸カリウムを使用したCODで分析を行います。

4. 浮遊物質量 : SS Suspended Solid

河川 3 湖沼 3

水のにごり具合を判定する指標

浮遊物質量とは、水中に溶けずに浮遊または懸濁(分散)している直径2mm以下の粒子状の物質(粘土鉱物による微粒子・動植物プランクトンなど)の量のことです。

試料をろ過器に注ぎ浮遊物質をろ過捕集します。浮遊物質を捕集したろ紙を乾燥器で乾燥後、放冷し、あらかじめ測定したろ紙の重量との差で浮遊物質量を算出します。

水中生物のエラなどに付着し呼吸困難な状態を招いたり、太陽光を妨げ光合成を阻害したり、生態系に影響を及ぼしたりします。

5. 溶存酸素量 : DO dissolved oxygen

河川 4 湖沼 4 海域 3

水中の溶存酸素の量

水に溶け込んでいる酸素の量(溶存酸素量)は、水中生物には必要不可欠なものです。
酸素量が減少した状況で細菌が有機物を分解すると悪臭が発生します。

試料に硫酸を加え、水酸化マンガン(酸素固定物)を溶かします。チオ硫酸ナトリウムを滴定し、色が消えた時の滴定量から溶存酸素量を算出します。

水の表面では植物プランクトンの光合成により溶存酸素量が飽和状態に、水の底層では有機物分解により酸素が消費されるため溶存酸素量が少なくなる傾向になります。

6. 大腸菌数 : E.coli coli counta

河川 5 湖沼 5 海域 4

屎尿(しにょう)汚染の指標

大腸菌は主に哺乳動物の腸管内に存在するため、人畜の屎尿による汚染を意味します。ふん便には、病原性生物を含むおそれもあります。
メンブレンフィルター法によって大腸菌を測定して汚染の程度を推定します。
水質汚濁防止法における排出基準では、大腸菌群数の個数が1日の平均的な汚染状態についての許容限度を 3000個 /cm3と定めています。

7. n-ヘキサン抽出物質(油分等): normal-Hexane Extract Substances

海域 5

水中の「油分等」を表す指標

動植物油脂と鉱物油の総称であり、試料にn-ヘキサンを加え80℃の温度で乾燥し、揮発しなかった物質のことです。
工場排水や家庭排水などが要因と考えられます。

河川等に流出すると、魚介類に油臭が付着したり油によりえら呼吸が困難になり死亡したりします。

8. 全窒素(または総窒素) : TN Total Nitrogen

湖沼 6 海域 6

9. 全りん(または総リン) : TP Total Phosphorus

湖沼 7 海域 7

富栄養化による水質汚濁の指標

全窒素は水酸化ナトリウム-ペルオキソ硫酸カリウム溶液を、全りんはペルオキソ硫酸カリウム溶液を試料に混合し、高圧蒸気滅菌器で加熱分解処理をします。
全窒素は塩酸を加えてpHを調節し、全りんはモリブデン酸アンモニウム-アスコルビン酸混合溶液を加え放置します。
全窒素、全りんとも分光光度計で吸光度を測定し、検量線を用いて値を求めます。

植物の生育に欠かせない元素は、窒素・リン・カリウム(肥料の三要素)であり、生活排水などにより窒素やリンが過剰に存在すると富栄養化を促進し赤潮(植物プランクトンの大量発生)やアオコ(藍藻の大量発生)の原因となります。

10. 全亜鉛 : Zinc

河川 6 湖沼 8 海域 8

水生生物の保全に係る指標

一般に、前処理後、原子吸光又はICP等で測定します。

亜鉛は自然界に存在し、生物にとって必要不可欠なものです。過剰摂取により、呼吸器に影響し酸欠状態になったり、内臓器に影響し成長に影響を及ぼしたりします。

11.ノニルフェノール : Nonylphenol

河川 7 湖沼 9 海域 9

水生生物の保全に係る指標

一般的に、ガスクロマトグラフ質量分析計を使用し濃度の測定をします。

起泡性が少ないノニルフェノールエトキシレートが工業用の洗浄剤として使用されており、これが下水処理や水環境中で生分解をされることによりノニルフェノールが生成されます。これが環境ホルモンではないかと考えられています。

12. 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 : LAS

河川 8 湖沼 10 海域 10

水生生物の保全に係る指標

一般的に、高速液体クロマトグラフ・タンデム質量分析計を使用し濃度の測定をします。

界面活性剤の一つであり、起泡性が多く、家庭洗濯用洗剤に使用されています。水生生物への毒性を持ち、繁殖に影響を与えたり遊泳を阻害したりします。

13. 底層溶存酸素量

湖沼 11 海域 11

底層付近の溶存酸素の量

溶存酸素計を湖底から1m程度のところに設置し、指示値を読み取ります。

湖沼や海の水面(海面)付近では日光が届くため光合成が起こりやすく、空気にふれているため溶存酸素量が多いです。一方、湖底や海底は日光が届きにくいため光合成がおこりにくく、溶存酸素量が少なくなり、生息域とする魚介類に影響を与えます。

14. クロロフィルa : Chl-a : chlorophyll a

藻類現存量および富栄養化の指標

懸濁物を分離するために遠心分離機にかけた後、蛍光光度計で蛍値を測定し濃度を計算します。

クロロフィルaとは植物中の葉緑体に存在する緑色の色素分子のことで、水中の植物プランクトンの量を推定できます。

15. 電気伝導率

液体中の電気の流れやすさを示す指標

電気伝導率計で測定します。

水の種別は、電気伝導率を含めた6項目でA1~A4に分類されます。A4の水は電気伝導率が0.1mS/m以下で、これを水の基準として水の汚れ具合を把握します。

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生活環境の保全に関する環境基準値(出典 : 環境省HP)

河川

類型 利用目的の適応性 基準
pH BOD SS DO 大腸菌数
AA 水道1級 自然環境保全及びA以下の欄に掲げるもの 6.5以上 8.5以下 1mg/L以下 25mg/L以下 7.5mg/L以上 20CFU/100ml以下
A 水道2級 水産1級 水浴及びB以下の欄に掲げるもの 2mg/L以下 300CFU/100ml以下
B 水道3級 水産2級及びC以下の欄に掲げるもの 3mg/L以下 5mg/L以上 1000CFU/100ml以下
C 水産3級 工業用水1級及びD以下の欄に掲げるもの 5mg/L以下 50mg/L以下
D 工業用水2級 農業用水及びEの欄に掲げるもの 6.0以上 8.5以下 8mg/L以下 100mg/L以下 2mg/L以上
E 工業用水3級 環境保全 10mg/L以下 ごみ等の浮遊なし

湖沼 (天然湖沼及び貯水量が1000万立方メートル以上かつ水の滞留時間が4日間以上である人工湖)

類型 利用目的の適応性 基準
pH COD SS DO 大腸菌数
AA 水道1級 水産1級 自然環境保全及びA以下の欄に掲げるもの 6.5以上 8.5以下 1mg/L以下 1mg/L以下 7.5mg/L以上 20CFU/100ml以下
A 水道2、3級 水産2級 水浴及びB以下の欄に掲げるもの 3mg/L以下 5mg/L以下 300CFU/100ml以下
B 水道3級 工業用水1級 農業用水及びCの欄に掲げるもの 5mg/L以下 15mg/L以下 5mg/L以上
C 工業用水2級 環境保全 6.0以上 8.5以下 8mg/L以下 ごみ等の浮遊なし 2mg/L以上
類型 利用目的の適応性 基準
全窒素 全りん
自然環境保全及びⅡ以下の欄 に掲げるもの 0.1mg/L以下 0.005mg/L以下
水道 1、2、3 級(特殊なものを除く) 水産1種 水浴及びⅢ以下の欄に掲げるもの 0.2mg/L以下 0.01mg/L以下
水道3級(特殊なもの)及びⅣ以下の欄に掲げるもの 0.4mg/L以下 0.03mg/L以下
水産2種及びⅤの欄に掲げるもの 0.6mg/L以下 0.05mg/L以下
水産3種(工業用水、農業用水、環境保全) 1mg/L以下 0.1mg/L以下

海域

類型 利用目的の適応性 基準値
水素イオン濃度(PH) 化学的酸素要求量(COD) 溶存酸素量(DO) 大腸菌数 n-ヘキサン抽出物質(油分等)
A 水産1級 水浴 自然環境保全及びB以下の欄に掲げるもの 7.8以上 8.3以下 2mg/L以下 7.5mg/L以上 300CFU/100ml以下 検出されないこと
B 水産2級 工業用水及びCの欄に掲げるもの 3mg/L以下 5mg/L以上
C 環境保全 7.0以上 8.3以下 8mg/L以下 2mg/L以上
類型 利用目的の適応性 基準値
全窒素 全リン
自然環境保全及びⅡ以下の欄 に掲げるもの(水産 2 種及び 3 種 を除く。) 0.2mg/L 以下 0.02mg/L 以下
水産 1 種 水浴及びⅢ以下の欄に掲げるもの(水産 2 種及び 3 種を除く。) 0.3mg/L 以下 0.03mg/L 以下
水産 2 種及びⅣの欄に掲げるもの(水産 3 種を除く。) 0.6mg/L 以下 0.05mg/L 以下
水産 3 種 工業用水 生物生息環境保全 1mg/L 以下 0.09mg/L 以下

栄養レベルに基づく調和型湖沼に分類 (出典 : OECD経済協力開発機構 1982)

区分 TP(リン)(mg/㎥) クロロフィルa(mg/㎥) 透明度(m)
平均 最大 平均 最小
極貧栄養 ≦4.0 ≦1.0 ≦2.5 ≧12.0 ≧6.0
貧栄養 ≦10.0 ≦2.5 ≦8.0 ≧6.0 ≧3.0
中栄養 10~35 2.5~8 8~25 6~3 3~1.5
富栄養 35~100 8~25 25~75 3~1.5 1.5~0.7
過富栄養 ≧100 ≧25 ≧75 ≦1.5 ≦0.7

水道原水の水質基準はなく、「水道法」では水道水の水質基準を満たす浄化施設が設置されていれば問題はありません。水道に関する用途では水道1級から3級までありますが、これは原水水質の目安となっています。つまり浄化が簡易で水質がきれいであれば1級、浄化に高度な処理施設が必要となれば3級ということです。

水の種別 (出典 : JIS)

項目 種別及び質
A1 A2 A3 A4
電気伝導率 mS/m 0.5以下 0.1以下 0.1以下 0.1以下
有機体炭素(TOC)mg/ℓ 1以下 0.5以下 0.2以下 0.05以下
亜鉛 μg/ℓ 0.5以下 0.5以下 0.1以下 0.1以下
シリカ μg/ℓ - 50以下 5.0以下 2.5以下
塩化物イオン μg/ℓ 10以下 2以下 1以下 1以下
硫酸イオン μg/ℓ 10以下 2以下 1以下 1以下